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事業承継で、より強い組織を作る——キャリアコンサルタントがお手伝いできること


※この記事は、事業承継を控えている経営者・後継者の方、および承継期の会社で人事・総務に関わっている方に向けた記事です。とくに親から子へ、あるいは親族内で引き継ぐケースを念頭に置いています(従業員承継でも、扱う中身はほとんど同じです)。

1. 手続きは進んでいるのに、なぜ不安が消えないのか?

事業承継の準備が動き出すと、税理士や金融機関、弁護士とのやり取りが一気に増えます。株式や税務の手続きは、そうやって着実に片づいていきます。

それでも、当事者の側には次のような迷いが残ります。

  • 現経営者「手続きは進んでいるが、いつ本当に譲るのか、自分でも決めきれない」
  • 現経営者「後継者は継ぐと言ってくれているが、本当に任せて大丈夫なのか、不安が消えない」
  • 後継者「継ぐつもりでいるが、どこまで自分の裁量で決めていいのか分からない」
  • 後継者「もう任せたと言われるが、大きな判断のときは結局、先に相談してしまう」

これは準備が足りないからでも、当事者の覚悟が足りないからでもありません。

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」は、引き継ぐべき経営資源を3つに分けています。「資産」だけでなく、「経営(人)」と「知的資産(技術・ノウハウ・組織力など)」も引き継ぐ対象だとしています(※1)。

このうち、書類と数字で片づくのは「資産」だけです。残る2つ、「経営そのもの」と「技術・ノウハウ・組織力といった知的資産」は、手続きの外に置かれたままになりがちです。手つかずの部分が残っているからこそ、最後の決断がしにくいのではないでしょうか。

2. 承継期に、4つの立場が抱えている不安

事業承継は、単なる社長交代ではありません。現経営者・後継者・幹部・社員、それぞれのキャリアが同時に大きく動く出来事です。立場ごとに不安の中身は違い、しかも近しい関係だからこそ、本音が言いにくくなっています。

立場 抱えている不安(言えない本音) 放置した場合に起こりやすいこと
現経営者 「社長でなくなった自分は、明日から何者なのか」「引退後の役割が見えず、手放すのが怖い」 権限を渡しきれず、つい現場に口を出して、後継者を萎縮させてしまう
後継者 「周囲の期待で継ぐが、自分の意志で選んだと言い切れるか」「古参の幹部に、自分の判断が通るのか」 逆境で踏ん張れず、古参幹部との対立で孤立してしまう
幹部 「新体制で、自分の居場所はあるのか」「社長との個人的な信頼関係で動いてきたが、次はどうなるのか」 「自分の代わりを探されている」と感じ、要となる人が離れてしまう
社員 「何も知らされないまま、方針や評価の基準が変わるのではないか」 不信感や憶測が社内に広がり、士気の低下や離職につながる

こうした不安は、税務や法務の書類を整えるだけでは扱いきれません。

なお、承継のかたちは親族内承継だけではありません。帝国データバンクが約27万社を対象に行った調査では、2025年の後継者不在率は50.1%と、7年連続で改善しています。内部昇格など、同族以外への承継が増える動きも見られます(※5)。ただ、4つの立場のキャリアが同時に動くという構造は、番頭格の幹部が引き継ぐ場合でもほぼ同じです。

3. なぜ「キャリアコンサルタント」が関わるのか?

社内の人間関係や本音の整理を、なぜキャリアコンサルタントが担うのか。理由は3つあります。

  1. 話した内容が、依頼主にそのまま伝わることはない
    キャリアコンサルタントは国家資格であり、資格者には法律上の守秘義務が課されています(職業能力開発促進法 第30条の27 ※2)。大事なのは、この守秘義務が誰を守るためのものか、という点です。守るのは、話した本人です。面談で聞いた内容は、費用を負担しているのが誰であっても、話した本人の同意なしに他へ渡すことはありません。

    会社にお返しするのは、誰の発言か分からない形にまとめた全体の傾向だけです。この取り決めは、面談を始める前に、話す本人と依頼主の双方に説明し、合意しておきます(※3)。だから後継者は「父にそのまま伝わるかもしれない」と身構えずに済み、社員も評価への影響を気にせずに話せます。

  2. 正解を押しつけない
    外から「あるべき組織図」を示して当てはめる進め方はとりません。対話を通じて、当事者自身が「自分で決められる状態」になることを支援します(自己決定の尊重 ※3)。

  3. 一人ひとりの本音を、組織の課題として整理して返す
    個人の愚痴やガス抜きで終わらせません。厚生労働省が推奨する「セルフ・キャリアドック」の手法を使い、個人を特定しない形(傾向と構造)に集約して、経営判断の材料としてお返しします(※4)。

4. 認識のズレは、どんな形で現れるか

渡す側と受け取る側は、同じ場面をまったく違うふうに見ていることがあります。実際に起こりやすいのは、次のようなズレです。

例1:顧客の引き継ぎ

  • 現経営者「営業の重要顧客は、すべて後継者に任せたつもりだ」
  • 後継者「価格交渉の最終決裁権はまだ渡されていない。どこまで自分で動いていいのか分からない」

例2:幹部の役割

  • 現経営者「幹部には、今までどおり現場の番頭役として支えてほしい」
  • 幹部「新社長のやり方に合わないなら、身を引いたほうがいいのではないかと悩んでいる」

どちらも、誰かが手を抜いた結果ではありません。現経営者は渡したつもりでいて、後継者は渡されていないと感じている。どちらの認識も、その人の中では正しいのです。だから社内では食い違いが指摘されないまま残り、決裁が止まったり、幹部が静かに距離を取ったりします。

一人ずつ話を聞いて、この食い違いを並べて見せる。そこから何が整理できるのかを、3点挙げます。

ズレが見えると、何が整理できるか

  1. 次に決めるべきことの優先順位が見えやすくなる
    「まず幹部と、新体制での役割を合意しよう」「後継者が不安に感じている業務の決裁ルールから引き継ごう」というように、曖昧だった引き継ぎの道筋を具体的にしやすくなります。
  2. 現経営者が「次の役割」を言葉にしやすくなる
    「会長・顧問として、対外的な信用を支える役に専念する」「地域活動や新規事業の相談役になる」など、社長退任後の居場所が言葉になると、権限を手放す判断がしやすくなります。
  3. 後継者の「覚悟」と幹部の「役割」を確かめる材料が得られる
    後継者は「自分で選んだ」と自分の言葉で言えるようになり、幹部は「新体制でも自分が必要とされている」ことを確かめられます。承継の前後で組織が揺らぐ兆しを、早い段階で把握しやすくなります。

面談でどの立場に何を伺うのか、また株価評価や相続対策などお引き受けしない範囲については、企業向けのご案内に整理しています。

まとめ:手続きが終わっても、引き継ぎは終わらない

事業承継のゴールは、手続きを終えることではありません。代が変わった後も、新しい体制で会社が回り続けることです。

そのためには、現経営者のこれからの役割、後継者に任せる範囲、幹部が新体制で担う仕事、社員への伝え方を、渡す側と受け取る側が同じ絵として見ている必要があります。どれも、どちらか一方だけでは決められません。

税務や法務の準備が進んでいる今だからこそ、後回しになりがちな「人と組織の引き継ぎ」に目を向けてみませんか。ご相談は、現経営者からでも後継者からでも構いません。

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承継の話は、ある程度進んでからでないと相談しにくいものです。ただ実際には、「まだ何も決まっていない」段階のほうが、確かめられることは多いものです。条件や進め方は企業向けのご案内にまとめていますので、お気軽にご覧ください。

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