金利のある社会で、家とお金をどう考えるか——Uターン就職を考える人へ(続編)
※この記事は備後地域出身で地元を離れた大学生や就活生に向けた記事です。
この記事は「地元で働くという選択肢——3つの資本で考える、これからの就活」の続編です。
前編では、就職先を給与の額面と知名度だけでなく、金融資本・人的資本・社会資本の3つの物差しで見る視点を紹介しました。そのうえで、実家という家族資本を活かして自己資金を厚くしておくことの意味に触れました。
ここでは、その先を扱います。貯めた自己資金を何に使い、どこに置くのか。金利が動き始めた社会では、この判断の前提が変わってきています。
「早く、長く借りる」が有利だった時代
長らく日本は超低金利が続きました。金利がほぼゼロに近ければ、お金を借りるコストは小さく済みます。
だから、次のような考え方が成り立ちやすい環境でした。若いうちに長期のローンを組んで家を買う。物価が上がっていけば、借りた金額の実質的な重みは目減りしていく。家賃を払い続けるより、早く買ったほうが有利になる。
これは当時の金利環境では、実際に合理的な判断でした。問題は、この前提が変わったときに、判断のしかたも一緒に変えられるかどうかです。
金利が動く局面で、何が変わるのか
マイナス金利政策が解除され、2025年12月から2026年6月にかけて政策金利は0.5%から1.0%程度まで引き上げられました※1。金利が動く局面に入ると、借入の重さは次のように変わります。
- 同じ借入額でも、総返済額が増える
- 変動金利は、将来いくら返すのかが読みにくくなる
- 固定金利は安心を買える分、当初の金利が高くなる
- 借りられる上限額そのものが、金利水準に左右される
つまり、借入額そのものの重さが増すということです。金利が低い時代なら多少借りすぎても吸収できた誤差が、そのまま効いてくるようになります。
だから、自己資金を厚くする意味が増している
金利が上がる局面で確実に効くのは、借入額を小さくしておくことです。金利がどう動くかは予測できませんが、借入額は自分で決められます。
前編で書いたように、実家という既にある資産を活かせる期間があるなら、そのあいだに自己資金を厚くしておける。頭金を多く入れられれば毎月の返済額は下がり、金利がどちらに動いても打撃は小さくなります。
そしてもう一つ大きいのが、急いで買わなくてよくなることです。数十年の借入は、次のようなことが固まる前に決める必要はありません。
- 転職や独立で収入が変わる可能性
- 家族構成が変わる可能性
- 住みたい場所が変わる可能性
- 実家の住まいを将来どうするかという判断
前編で「急がなくてよいという状態そのものが、自由です」と書いたのは、この意味です。
貯めた自己資金を、円だけで持つかどうか
もう一つの論点が、貯めたお金をどこに置くかです。
円だけで持つことは、安全に見えて、実は資産を円に集中させている状態でもあります。円安が進めば、輸入に頼る食料やエネルギーの価格は上がり、円で持っている資産の実質的な購買力は下がります。
預金にも利子が付きますが、物価上昇率を下回る金利のもとでは、置いておくだけで実質的な価値は目減りしていきます。
ここで出てくるのが通貨分散という考え方です。たとえば全世界株や米国株のインデックスを積み立てる場合、その中身の多くはドルなど外貨建ての資産になります。円が下がる局面では、この部分が支えになりえます。
注意してほしいのは、これは「円安が続くと予測して賭ける」話ではないということです。為替の先行きは誰にも分かりません。当てにいくのではなく、一つの通貨に集中させないという発想です。国の税制優遇制度(NISAなど)も含め、若いうちから時間を味方につけられるのは大きな利点です。
なお、備後キャリアラボは金融商品の助言は行いません。具体的な商品選びは、ご自身で調べ、必要に応じて専門家に相談していただく領域です。
前編の問いに戻る
前編の最後に、こんな問いを置きました。
20年後の自分に、どんな選択肢を残したいか。
家を買うタイミング、借入の額、お金の置き場所。これらはどれも、20年後の選択肢の幅を決める判断です。そして就職先と住む場所を選ぶ段階で、すでにその一部は決まり始めています。
大切なのは、正解を当てることではありません。どちらに転んでも動けるようにしておくことです。
備後キャリアラボは、この問いを一緒に整理する相手でありたいと思っています。進路や働き方の相談は個人の方へのページをご覧ください。
→ 前編: 地元で働くという選択肢——3つの資本で考える、これからの就活
出典
- ※1 日本銀行の政策金利引き上げ(2025年12月・2026年6月、31年ぶりの水準):第一生命経済研究所「政策金利1.00%への引き上げ」