「社員のやる気がない」で終わらせない――人と組織をつなぐキャリアコンサルティング
「最近、社員のモチベーションが低い」
「会社へのエンゲージメントが高まらない」
「期待していた社員が、突然退職を申し出てきた」
こうした場面で、原因を社員本人の意欲や姿勢に求めていないでしょうか。
仕事への向き合い方に個人差があるのは事実です。しかしモチベーションが上がらない背景には、本人の問題だけでなく、社員が実現したいことと、会社から与えられた役割がうまく接続していないという構造的な問題が隠れていることがあります。
この接点を見つけ、社員と組織の双方に働きかけるのが、キャリアコンサルティングです。
仕事は収入を得る手段であり、自己実現の手段でもある
社員にとって仕事は、生活に必要な収入を得る手段であると同時に、自分の可能性を形にする手段でもあります。
- 自分の能力や経験を生かしたい
- 新しいことを学び、成長したい
- 誰かの役に立ち、社会に貢献したい
- 自分らしい生き方や働き方を実現したい
とりわけ成長意欲や責任感が強い社員ほど、報酬だけでなく「この仕事をする意味」「自分が成長できるか」「目指す将来につながるか」を重視します。
意欲の高い人材に長く活躍してもらうには、社員を単なる労働力としてではなく、仕事を通じて自分の可能性を実現しようとする存在として理解することが出発点になります。
モチベーションが上がらないのは、仕事の意味が見えていないからかもしれない
モチベーションが上がらないからといって、本人にやる気がないと判断することはできません。会社から与えられた役割と、本人が大切にしている価値観・得意なこと・目指す将来とのつながりが、見えていないだけかもしれないからです。
たとえば次のことが腑に落ちると、同じ業務でも受け止め方が変わります。
- 自分の強みをどこで生かせるのか
- 誰に、どのような価値を提供しているのか
- この経験が将来のキャリアにどうつながるのか
ただし、会社が一方的に「この仕事には意味がある」と説明しても、納得感は生まれにくいものです。社員自身が自分の言葉で仕事を意味付けできることが重要です。
面談では、本人の中にある答えを言語化する
とはいえ、自分の価値観、強み、将来像を一人で整理し、言葉にできる社員は多くありません。キャリアコンサルティングでは、専門家との対話を通じて、本人が次のことを言語化できるよう支援します。
- 自分は仕事で何を大切にしているのか
- どのような強みを生かしたいのか
- 今の仕事にどのような意味を見いだせるのか
- 自分の目標と会社の目標をどこで接続できるのか
キャリアコンサルタントは答えを与えるのではなく、問いかけを通じて本人の考えを整理し、自分なりの答えを見つけられるようにします。
自分で言語化した目標や仕事の意味は、会社から一方的に与えられたものよりも納得感が高く、主体的な行動につながります。
「本人の意味付け」だけで解決しようとしない
ここで注意したいのは、モチベーション低下の原因をすべて社員個人に求めないことです。たとえば次のような問題があるなら、個人への働きかけだけで解決するのは困難です。
- 業務量が過大で、余裕がない
- 処遇や評価に公平感がない
- 上司との関係や、役割・期待の伝え方に問題がある
- 本人の強みと配置・業務内容が合っていない
このような場合は、社員を現在の環境に無理に適応させようとするのではなく、組織側の仕組みやマネジメントを見直す必要があります。
キャリアコンサルタントは組織側にも改善を提案する
キャリアコンサルタントの役割は、個人を支援することだけではありません。複数の面談から共通する課題を把握し、経営者や人事部門に組織改善を提案することも重要な仕事です。
- 社員の強みを生かす配置や役割の見直し
- 上司による1on1やフィードバックの改善
- キャリアパスや評価基準の明確化
- 学び直しや能力開発の支援
なお、面談で社員が話した内容は守秘義務に基づいて取り扱い、そのまま会社へ伝えることはありません。個人が特定されないよう配慮したうえで、組織に共通する傾向や課題としてフィードバックします。
こうしてキャリアコンサルタントは、個人と組織の間に立ち、双方の課題と目標を接続する役割を担います。
キャリアコンサルティングは福利厚生ではなく経営施策
社員へのキャリアコンサルティングによって、次のような効果が期待できます。
- 仕事に対する納得感と主体性の向上
- エンゲージメントの向上と、意欲ある社員の離職防止
- 社員の強みを生かした配置・役割設計
- 現場の声を生かした組織改善
キャリアコンサルティングの目的は、本人が目指す方向と会社が提供できる役割との接点を明らかにし、双方にとって納得できる働き方をつくることです。社員を会社に引き留めたり、現在の仕事に無理やり納得させたりするための面談ではありません。
社員の声を聴くだけで終わらせず、そこから組織の課題を発見し、経営や人事施策の改善につなげる。キャリアコンサルティングは、社員個人のための相談制度ではなく、人と組織がともに成長するための経営施策なのです。